腕や脚は細いのに、なぜお腹や骨盤周りだけ太るのか

はじめに

施術中にこんな相談を受けることがあります。

「腕や脚は細いのに、
なぜかお腹や骨盤まわりだけが太っています…」

先日も同様の質問がありました。
その方に関しては、よく歩いたり、ジムに通って水泳もしています。
食事もそれなりに気をつけている。
それなのに、お腹だけが落ちないというのです。

この体型は必ずしも、食べ過ぎの結果ではございません。
もちろん、個人差のあることですし、全員には当てはまりませんが。

むしろ、身体が一生懸命あなたを守ろうとした結果として起こることがあります。

この記事では、

  • なぜこのような体型が起こるのか

  • 身体の中で何が起きているのか

  • どう向き合えばよいのか

を、少し専門的な内容も含めて、できるだけ分かりやすく解説します。


キーワードは「糖新生(とうしんせい)」

まず、今回の話の中心になるのが
糖新生(Gluconeogenesis)という身体の仕組みです。

糖新生とは、

身体の中で、新しく糖(ブドウ糖)を作り出す仕組み

です。

通常、私たちは食事から糖を摂取します。
しかし、

  • 食事が取れない

  • エネルギーが不足している

  • 非常事態が続いている

と身体が判断したとき、
肝臓を中心に、糖新生が働きます。


糖新生は「悪い反応」ではありません

ここでとても大切なことがあります。

糖新生自体は、異常でも病気でもありません。

むしろ、

生き延びるために備えられた、極めて正常な生理反応

です。

  • 低血糖を防ぐ

  • 脳や神経を守る

  • 長期的な危機に耐える

そのための「生命維持システム」です。

問題になるのは、

断食をしていない、
また飢餓状態ではないにもかかわらず、
糖新生のスイッチが入りっぱなしになること

です。


断食していないのに糖新生が起こる理由

通常、糖新生は

  • 断食

  • 食事制限

  • 飢餓状態

などで起こりやすくなります。

ところが実際には、

普通に食事をしているのに、
糖新生が働き続けている人

がいます。

その大きな原因のひとつが、
長期的なストレスです。


ストレスとコルチゾールの関係

ストレスが続くと、身体では
コルチゾールというホルモンが分泌され続けます。

コルチゾールはよく

「血糖値を上げるホルモン」

と言われますが、
本質的には「血糖値を下げないためのホルモン」と理解した方が正確です。

なぜなら、身体にとって
低血糖は生命の危機だからです。

  • 神経

  • 赤血球

これらは糖が不足すると、すぐに機能低下を起こします。


高コルチゾール状態で何が起こるのか

長期的なストレスにより
コルチゾールが高い状態が続くと、身体では次のようなことが起こります。

● インスリンが「効きにくく」なる

食事をすれば、血糖は上がり、
通常はインスリンが分泌されて糖を細胞に摂り込みます。

しかし、高コルチゾール状態では、

  • インスリンは分泌されている

  • なのに、筋肉や脂肪細胞に糖が摂り込まれない

という状態(つまり、インスリンが効きにくい状態)になります。

これは「機能的インスリン抵抗性」と呼ばれます。


糖はあるのに、使えないという矛盾

この状態では、

  • 血液中には糖がたくさんある

  • しかし、細胞はうまく使えない(摂り込まれない)

という矛盾が起こります。

身体はこれを、

「エネルギーが足りない」
「非常事態が続いている」

と誤認します。

そこで身体は自ら糖を作り出す、糖新生のスイッチを入れるのです。


糖新生はどこで起こり、何を使うのか

糖新生そのものは、主に肝臓で行われます。

では、糖新生の材料は何でしょうか?

主な材料は、

  • 筋肉由来のタンパク質(アミノ酸)

  • 乳酸

  • グリセロール

この中で、長期ストレス下で使われやすいのが
筋肉由来のタンパク質です。


なぜ「下肢の筋肉」から使われるのか

身体は、すべての組織や筋肉を同じように扱っているわけではありません。
生命維持への重要度によって、明確な優先順位があります。

まず最優先で守られるのは、

  • 脳(神経組織)

  • 心臓(心筋)

  • 呼吸に関わる筋肉(横隔膜など)

これらは、生命維持に直結しており、
エネルギー不足や組織の分解が起これば、
すぐに命に関わるため、身体は極力ここを守ろうとします。

一方で、

  • 下肢の大きな骨格筋(太もも・お尻など)

は、

  • 筋量が大きく

  • 一時的に分解されても、すぐに生命の危機には直結しにくい

という特徴があります。

そのため身体は、

糖新生の材料が必要になった際、下肢の大きな骨格筋からタンパク質を調達する

という選択をします。

この仕組みによって、

  • 腕や脚は細くなりやすい

  • 体幹部は守られやすい

という体型の変化が起こることがあるのです。


なぜお腹や骨盤まわりに脂肪が集まるのか

高コルチゾール状態では、脂肪は減るのではなく

  • 再配置される

と考えた方が自然です。

そもそも身体は、非常事態と勘違いをして、糖新生を起こしています。
エネルギーや代謝を管理しやすい場所に脂肪を集めようとするのです。
その結果、内臓を守り、肝臓と連動しやすい体幹部・内臓周囲に脂肪が再配置されるのです。

体幹部・内臓周囲の脂肪は、

  • 内臓を守る

  • エネルギーをすぐ使える

  • 非常時に有利

そのため、

「守りの脂肪として」お腹や骨盤まわりに集まりやすくなるのです。


腹筋や追い込み運動では改善しにくい

このタイプの体型の方が、

  • 腹筋を増やす

  • 有酸素運動を増やす

  • 食事をさらに減らす

と、かえって体調面においても悪化するケースがあります。

なぜなら、

頑張る行為そのものが、コルチゾールをさらに高めてしまう

からです。


改善の方向性

このタイプの体型の方に必要なことは、

脂肪を削る努力ではありません。
身体が「非常事態である」と、「誤認しなくていい状態」に戻ることなのです。

具体的には、とてもシンプルです。

  • 歩く(追い込まない適度な運動)

  • お風呂で温まる

  • よく眠る

そして、最も大切なことが、すべてにおいて

無理して頑張らないこと

なのです。


ストレスとの向き合い方が大切

長期的な悩みやストレスがある場合、その向き合い方が大切になります。

おすすめは、

  • 歩きながら「何が一番嫌なのか」を考える

  • お風呂で温まりながら考える

  • 寝る前は刺激の強い情報を避け、良書を読む

身体が整う環境では、
考えも深みに落ちにくくなります。

歩きながらや、お風呂で汗をダラダラかきながらですと、気分が沈むことは難しいのです。

また、むしろ適切な解決案が思い浮かぶことすらあります。
そうやって、
過剰なコルチゾール分泌生活から、徐々に切り離していくことが最優先なのです。


おわりに

腕や脚は細いのに、お腹や骨盤まわりだけ太い。

それは、

身体が一生懸命ストレスからあなたを守ろうとした結果

かもしれません。

身体が「もう大丈夫」と判断したとき、
お腹の脂肪は、自然と役目を終えていきます。

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