今回は、当院に通われている方にも多い、更年期障害にひとつと言われているホットフラッシュについてです。
ホットフラッシュと糖質過多との関係性についてお伝えします。
糖質過多の生活がホットフラッシュとどのように関係するのでしょうか?
その仕組みについて極力かんたんに解説します。
食生活がホットフラッシュ症状を招く?
ホットフラッシュは、更年期の女性に見られる症状で、突然の身体の熱感や発汗を伴います。
この症状に悩まされる方が多く来院されていますが、実は食生活が一因となっていることをご存じでしょうか?
症状に悩んでいる方の下腹部や足首の触診から、「糖質が関係しているよ」と私が伝えると、ほぼ100%の確率で、「そんなに甘いもの食べていないんだけど」とご返答頂きます。
この「そんなに食べてない」というワードを使う方は、100%食べ過ぎている方です(笑)(申し訳ございませんがm(__)mきっぱり断言しておきます)。
逆に、そうでもない人ほど、「あぁ、確かに最近ちょっと食生活乱れていたな」と言います。
この差は、申し訳ないけれども、「天と地ほどの差」があります。
自分に甘いか、自分に厳しいか。
「自分に厳しい」というのは、自己を省みる力そのものを言います。
省みれる人は、ホットフラッシュに限らずどんなツライ症状をも克服できる可能性がかなり高いです。
治療家を始めて22年になります。
ずっとその現実を突きつけられてきております。
糖質過多とAGEsの生成
糖質を過剰に摂取していると、体内でAGEs(Advanced Glycation End-products、最終糖化産物)が生成されます。
AGEsは、糖とタンパク質が非酵素的に結合することで形成され、体内に蓄積されるとさまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。
AGEsの何が問題なのか?
AGEsは体内で蓄積され、炎症反応を引き起こし細胞機能を低下させることが知られております。
特に内臓脂肪が多い場合、AGEsの生成が促進されます。
内臓脂肪がAGEsの生成を促進する理由
内臓脂肪が多いとインスリン抵抗性が高まりやすくなります。
つまり、インスリンが機能しなくなるとお考え下さい。
インスリン抵抗性が高まると、血糖値が上昇しAGEsの生成を促進してしまうのです。
さらに、内臓脂肪が分泌する炎症性サイトカインは、体内の慢性炎症を引き起こし、AGEsの生成を増加させることが知られています。
炎症はAGEsの形成を促進する重要な因子の一つです。
AGEsとホットフラッシュの研究
AGEsの蓄積はホルモンバランスを乱し、炎症を引き起こすことが研究で明らかとなっております。
つまり、ホットフラッシュを悪化させる可能性があるのです。
2017年に「Menopause」誌に発表された研究では、ホットフラッシュを経験する女性の血中AGEsレベルが高いことが示されています。
以下がその研究内容の概要となります。
研究の方法
参加者:
- 年齢:45歳から60歳の女性
- サンプル数:150名(ホットフラッシュを経験する女性75名、経験しない女性75名)
- 診断基準:ホットフラッシュの有無、頻度、重症度
測定項目:
- 血中AGEsレベル:特にカルボキシメチルリジン(CML)というAGEsの一種
- 他の健康指標(BMI、血糖値、インスリン抵抗性など)
研究結果
AGEsレベルの測定:
- ホットフラッシュを経験する女性の血中AGEsレベルは、ホットフラッシュを経験しない女性に比べて有意に高いことが示されました。
- ホットフラッシュ経験者の平均AGEsレベル:6.2 μg/ml
- 非経験者の平均AGEsレベル:4.3 μg/ml
他の健康指標との関連性:
- 高AGEsレベルは高血糖値およびインスリン抵抗性とも関連がありました。
- 高BMI(肥満)の女性では、さらに高いAGEsレベルが観察されました。
考察
メカニズムの推定:
- ホルモンバランスの変化:
更年期に伴うエストロゲンとプロゲステロンのバランスの乱れが代謝の変化を引き起こし、AGEsの生成を促進する可能性があります。 - 炎症の増加:
AGEsは体内で炎症反応を引き起こします。
この炎症がホットフラッシュの頻度や重症度に影響を与えることが考えられます。 - 酸化ストレス:
AGEsは酸化ストレスの増加をもたらし、これが細胞機能を損ない、ホットフラッシュの症状を悪化させる要因となります。
実践的な示唆:
- 糖質摂取を控え、抗AGEs食品(抗酸化物質が豊富な食品)の摂取を推奨することが、更年期女性のホットフラッシュ軽減に役立つ可能性があります。
- 体脂肪、特に内臓脂肪の管理が重要であり、適度な運動やバランスの取れた食事が推奨されます。
研究結果のまとめ
ホットフラッシュを経験する女性において、血中AGEsレベルが高いことが明らかとなりました。
AGEsの生成は高血糖やインスリン抵抗性、肥満と関連しております。
これらがホットフラッシュの悪化要因となり得るのです。
食生活や運動習慣の改善が重要であり、AGEsの蓄積を抑えるための具体的な対策が必要です。
ホットフラッシュの予防と対策
ホットフラッシュを軽減するためには、糖質の摂取を控えることが最重要です。
- 朝に食パンを食べていないか
- 朝から菓子パンを食べていないか
- 朝から白米をたくさん食べていないか
- 砂糖の入ったヨーグルトを食べていないか
- 腸に良いと言われている、角砂糖が大量の飲料水を飲んでいないか
- 甘い飲み物、栄養ドリンクを飲み過ぎていないか
- 流行りのファスティング用の酵素ドリンクが血糖値上昇を招いているケースが多い
- 果物(果糖)も症状が頻発する場合は避けたい
- 「消費するからいいか」と思い、朝からケーキやお菓子を食べていないか
- 食べて直ぐに横になっていないか
- ラーメン、蕎麦、うどんが多くないか
- 「蕎麦だからいいか」は大きな勘違いで、糖質が高い食べ物と心得ること
あげればキリがありません。
このように羅列しますと、絶望する方もいるかもしれません。
しかし糖質は血糖値の乱高下を起こし(血糖スパイク)、すでに症状が強くある方は極力避けるに越したことはないのです。
中には、「糖質を断つくらいなら、症状を我慢する」という方もいらっしゃいます。
これも仕方のないことのように感じます。
いずれにせよ、症状がツライ場合においては、糖質を控えることが身体のためになることは動かぬ事実と言えます。
私も糖質は習慣化しており、大好きではあります。
しかし、自身のランチ後の疲労感や胃痛から、極力気を付けるようになりました。
たとえば、大盛を普通盛りにする。
定食のご飯を、普通盛りから気持ち少なめにオーダーする。
食後は10分以上歩く。
歩ける時は20分歩く。
階段を使う。
間食を止める。
そうやって、自分で気を付けていくことが大切なのです。
小さくとも、できることから変えるしかないのです。
ストレスの管理
ストレスはホットフラッシュの悪化要因です。
よく、「先生、ヨガが良いですか?」「ピラティスが良いですか?」と聞かれますが、どんなに良いことも、「やらなきゃ!!」という思い込みこそがストレスとなります。
というのも、ヨガやピラティス不足で症状が出ているわけではないのですから。
なにごとも、積極的心持でやれるものが大切です。
もちろん、適度な運動は体脂肪の減少に寄与し、AGEsの生成を抑えることができます。
たまに、「健康のために白米を止めて、玄米にしている」という方もいらっしゃいますが、「好きではないけど、健康のためにそうしている」場合は身体に良い働きを促しません。
どんなに身体に良いと言われるものも、精神の向きひとつで悪いものとして、身体は処理をします。
現代人は頭脳偏重で、その辺りの感覚が鈍くなっている傾向にあります。
ちょっと嫌な言い方になりますが、情報が溢れ過ぎていることもあり、「頭が良い故に、身体が馬鹿になっている」のです。
断食と同じで、「食わない」と決めてやる断食は、健康になります。
しかし、「食えない」とクヨクヨしてやる断食は、病気になります。
断食は、「わ」と「え」の違い。
これは私の尊敬する故野口晴哉先生からの教えです。
抗AGEs食品の紹介
抗酸化物質を多く含む食品は、AGEsの生成を抑える効果があると言われております。
例えば、ビタミンCやビタミンEを含む食品は、AGEsの形成を抑制することが知られています。
これらを含む食品やサプリメントの摂取を検討すると良いのですが、実際は食品から必要量を得ることは難しいのが現実です。
症状が強く出ている方は、サプリメントの活用を試してみるのが良いでしょう。
個人的には、「サプリはクスリ」だと思って用いるべきだと感じております。
つまり、「副作用があるものと考えるべき」ということです。
できる限り良質なものを活用するのが良いことは、言うまでもありません。
CMしているような安価なものは、私個人としては飲みたくありませんし、信用もしておりません。
ただし、症状が強く、どうにかしたい場合は、試してみる価値があります。
特にビタミンCはリスクとしては最小限のビタミンと言えましょう。
症状が強く悩んでいる方は、まずは、良質なビタミンCを摂ってみることをおススメします。